2025.06.09
コラム「雨が告げる別れの時」
梅雨の季節になりました。
雨は人生のさまざまな瞬間に寄り添うものです。喜びの涙として、恵みとして、あるいは別れの象徴として。ことわざには、人々の思いが込められており、葬儀の場面にも雨にまつわる表現があります。
「雨降って地固まる」 このことわざは一般に「困難の後には安定が訪れる」という意味で使われます。葬儀においては、悲しみの後に故人との思い出がより深まることを示唆しています。降りしきる雨の中で見送ることで、家族の絆や故人の存在がより確かなものになるのかもしれません。
葬儀の日に降る雨を「涙雨」と呼ぶことがあります。この雨は、故人が天から涙を流しているといわれ、遺族の悲しみに寄り添うかのようです。しとしとと降る雨が静けさと哀愁を漂わせ、別れの重さをいっそう際立たせます。
一方で「晴れて見送る」という言葉は「雨が降らず晴れ渡る日は、故人が安らかに旅立つ証」とも考えられることがあります。雨が降れば「涙雨」、晴れれば「旅立ちの穏やかさ」と、日本の文化には天候と感情が深く結びついています。自然の営みが、人々の感情を代弁しているようです。
雨が降る葬儀の日。偶然と思えばそれまでですが、古くからのことわざは、そこに意味を見出そうとします。亡き人への想いが空へと届くように、雨粒が静かに地上を潤します。その情景に心を寄せることで、故人との別れをそっと受け入れるのかもしれません。
このコラムを書いたのは、JA葬祭センター袋井 相羽