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コラム「湯灌(ゆかん)」~清めと別れのあいだで~

お知らせ

2025.10.31

コラム「湯灌(ゆかん)」~清めと別れのあいだで~

 湯灌(ゆかん)という言葉を耳にすると、少し古風な響きを感じるかもしれません。けれども、日本の葬送文化においてはとても大切な儀式です。亡くなった方の身体を湯で清め、髪を整え、白装束をまとわせる――その一連の行為には、宗教的な意味が込められています。
 仏教では、死は六道を巡る旅立ちの始まりとされ※、清らかな姿で仏前に臨むことが成仏への第一歩と考えられてきました。湯灌は、現世の苦しみや穢れを洗い流し、安らかな心で次の世界へ向かうための支度なのです。
 同時に、湯灌は遺族にとっても大切な時間になります。病気や老いで変わってしまった顔が、清められ整えられることで、故人らしい穏やかな表情を取り戻す。その姿を目にすることで、「きっと安らかに旅立てる」という安心感が生まれ、深い悲しみの中にある心が少し和らぎます。最後に身体に触れ、共に清める行為は、言葉にならない別れの気持ちを形にする瞬間でもあります。
 現代では、病院や葬儀社の専門スタッフが中心となって湯灌を行うことが多くなりました。衛生的な配慮や専門的な技術が加わり、より安心して故人を送り出せるようになっています。それでも根底にあるのは遺族親族皆様の「清めて送り出す」という変わらぬ思いです。湯灌は、宗教的な意味と心理的な癒やし、そして現代的な実用性が複合して表出する場であり、死を終わりではなく、新たな旅立ちとして受け止める日本人の死生観を今に伝えているのではないでしょうか?

※一部宗派は除きます

このコラムを書いたのは、JA葬祭センター袋井 相羽

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