2025.07.10
コラム「遠州大念仏(えんしゅうだいねんぶつ)」~伝統が奏でる祈りの響き~
静岡県遠州地方に伝わる遠州大念仏は、単なる宗教儀式ではなく、地域の歴史と文化を映し出す貴重な伝統芸能です。毎年7月の盂蘭盆の時期になると、初盆を迎えた家々の庭先で、笛や太鼓、鉦(かね)の音が響き渡り、念仏が唱えられます。
遠州大念仏の起源は、戦国時代の1572年、三方ヶ原の戦いや犀ヶ崖の戦いで犠牲となった人々の供養にあるとされています。戦後、地域に広まったこの念仏踊りは、江戸時代には約280の村々で行われるほど盛んになりました。しかし、時には徒党を組んで争いを起こすこともあり、禁止令が出されたこともあったそうです。
現在、遠州大念仏は約70の組が保存会に所属し、伝統を守り続けています。当JA管内では、浜松市浜北区の寺島組や袋井市木原の木原組といった保存会の皆様が精力的に活動されています。9月開催予定の納涼祭において木原大念仏を披露して頂く予定です。
遠州大念仏の特徴は、勇壮な太鼓の響きと念仏の唱和です。隊列を組んだ念仏団は、笛・太鼓・鉦の音に合わせて行進し、庭先に入ると太鼓を中心に双盤を置き、音頭取りに合わせて念仏や歌枕を唱えます。この音の力強さは、単なる供養の枠を超え、地域の結束を象徴するものとなっています。
このコラムを書いたのは葬祭センター袋井 服部